桑(クワ)といえば、葉は蚕の食べ物として知られています。
実は昔からある漢方薬の一つです。葉はお茶として飲まれたり、実でお酒を造ったり、様々な部位が利用されてきました。
桑は昔からどのように利用されてきたのでしょうか。
そして漢方薬の原料にもなる桑は、健康にどのような効果があるのでしょうか。
桑の歴史は古く、中国では昔から乾燥させた桑をお茶や薬として利用してきました。
中国の後漢の歴史書にも桑の記述があり、糖尿病をはじめ様々な病気の予防や改善に役立てられていたといわれています。
現在も桑は桑白皮(そうはくひ)という生薬として使われています。
そして同じ桑でも、干した時期と部位によって名前が変わるのです。
11月頃に葉を採取して天日干しにしたものを桑葉(そうよう)と呼びます。
そして4月~6月頃の若枝を刈り取り天日干しにして乾燥させたものを桑枝(そうし)、4月~6月頃に果実を集めて乾燥させたものは桑椹(そうたい)と呼ばれるます。
日本では鎌倉時代に臨済宗の栄西によって、不老長寿の薬として桑が伝えられました。
陰干しした桑の葉がお茶として飲まれ、当時から「高血圧」「糖尿病」「咳止め」に効く健康茶として愛飲されていたといわれています。
その万能の効果から「神仙茶」と名付けられ親しまれてきました。
桑はとてもすぐれた植物です。
根、葉、果実と、さまざまな部位を利用することができます。
根
根皮は日本薬局方で桑白皮(そうはくひ)という生薬になります。
「利尿作用」「血圧降下作用」「血糖降下作用」「解熱」「鎮咳」などの作用があり、漢方薬の「五虎湯(ごことう)」や「清肺湯(せいはいとう)」などに配合されています。
葉
葉は緑茶の代用品として、「桑茶」と呼ばれ飲まれてきました。
そのほかに、若くて柔らかい葉を天ぷらにして食べることもできます。
桑の葉にも、桑白皮(そうはくひ)と同様に血糖値を下げる効果があることが近年の研究で明らかになりました。
さらには桑を餌とする蚕のフンを乾燥させたものにも同じ効果があり、漢方では「蚕砂」(さんしゃ)といいます。
桑の実
桑の実は地方によっては桑酒として果実酒の原料となっています。
果実は甘酸っぱく、アントシアニンをはじめとするポリフェノールを多く含みます。
そのため、高い抗酸化作用があるとされています。
果実の旬は4月~5月です。キイチゴの実を細長くしたような姿で、赤黒く実ります。
また、非常食として桑の実を乾燥させた粉末を食べたり、水に晒した成熟前の実をご飯に炊き込むなどして食べられてきました。
中国から日本に渡り、およそ1000年前から日本でも生薬として使われてきた桑。
西洋医学が普及してからは身近でなくなってしまいました。
しかし漢方ブームの到来とともにその効能は見直され、いまでは通販サイトやお茶専門店で「桑茶」を買うことも難しくありません。
皆さんも見かける機会があれば、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。