学校給食の定番でもある牛乳。「たくさん牛乳を飲めば健康になれる」という考えが今疑問視されています。
それはいったいどういうことなのかご紹介します。
「完全栄養食品」とまで呼ばれている牛乳ですが実はその常識が今見直されています。
産まれたばかりの赤ちゃんは母乳やミルクだけである程度過ごすのに、それが健康に良くないなんて!と思う方もいるでしょう。
まずはそのメカニズムを見てみましょう。
母乳や牛乳、乳児用ミルクの主成分は乳糖(ラクトース)ですが、これを分解するのがラクターゼという酵素です。
乳児の小腸にはラクターゼがあり、乳糖を分解してガラクトースなどになり体や脳の発育に使われます。
ところが授乳期を過ぎるとガラクトースは肝臓で作ることができるようになり、ラクターゼは必要なくなります。
すると通常小腸からラクターゼは減少し、乳糖が分解できなくなるのです。
1万年の昔から牧畜を営んでいたヨーロッパ人の祖先はその乳を飲む必要があったため、遺伝子変異が起こり成人になってもラクターゼを持つようになりました。
しかし、農耕民族であるアジア人の小腸には基本的にラクターゼが少なく乳糖を完全に分解できないのです。
ですから多くの日本人の成人は牛乳を飲み過ぎるとお腹の調子が悪くなります。
これを「乳糖不耐性」と呼びますが、上記のように耐性を持ち続ける人種のほうが特殊なのであり、もともと成人のヒトは乳糖不耐性なのです。
ちなみに乳糖を発酵分解させたチーズや乳酸菌で分解したヨーグルトなら成人の腸でも消化できます。
また近年では牛乳や乳製品に限らず動物性食品の摂り過ぎががんのリスクを高める可能性があるという研究結果も報告されています。
もともと農耕民族である日本人の体に植物性の食品が合っているということは自明の理でもあります。
そもそも牛乳はカルシウムの摂取にいいとされていますが、牛乳だけではなく植物性食品など様々な食品から摂取するのが健康には望ましいのです。
厚生労働省によると、成人のカルシウムの豊富な食品の1日当たりの摂取量は牛乳・乳製品130g、豆類100g、緑黄色野菜120g以上が目標です。
牛乳をちょっとでも飲んだからと言ってただちに健康を害する訳ではありませんが、1日の摂取量はコップ1~2杯に留めるのが良いでしょう。
併せて牛乳を消化の良いチーズやヨーグルトに代えたり、乳製品にこだわらず多品目の食材をまんべんなく摂取することが望ましいと考えられます。