健康診断で血糖値が正常と診断されているにもかかわらず、実際には「血糖値スパイク」という危険な状態が起きている人が少なくないことがわかってきました。
血糖値スパイクとはどんな状態なのか、そのリスクや予防・改善法などについてご紹介します。
わたしたちが食事から摂取した糖質は、消化されて血液から全身の細胞に取り込まれてエネルギー源として活用されます。
健康な人の場合、「インスリン」というホルモンの働きによって血糖値は一定の範囲内に収まるようコントロールされていますが、暴飲暴食等でインスリンの働きが悪くなると、 血糖値が常に高い状態になってしまいます。これが「糖尿病」です。
糖尿病は放置すると全身にさまざまな影響を及ぼすということは、多くの方がご存知だと思います。
糖尿病は、健康診断などで「空腹時の血糖値を測定する」ことにより発見できます。
ところが近年の研究で、空腹時の血糖値の検査では異常が見つからない人の中にも、血糖値異常が起こっているケースがあることがわかってきました。
「普段の血糖値は正常の範囲内にあるが、食後の短時間だけ血糖値が急上昇する」という状態なので、通常の健康診断では発見されにくいのです。
これが「血糖値スパイク(グルコーススパイク)」と呼ばれる問題です。
「食後に血糖値が急上昇すると言っても、普段が正常値ならそれほど問題はないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、血糖値スパイクの状態が続くと糖尿病に発展するリスクがあるばかりか、ほかにもさまざまな悪影響が生じることがわかっています。
血糖値の急上昇・急下降が繰り返されると、細胞から大量の「活性酸素」が発生します。
活性酸素は本来、外敵を攻撃するためのものですが、増えすぎると自分自身の細胞をも攻撃して傷つけます。
活性酸素が血管を傷つけると、修復のために血管壁が厚くなり、動脈硬化を引き起こします。動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを高め、突然死につながることもあります。
血糖値スパイクの危険性を知り、予防・改善に努めることが大切です。
さまざまなリスクをもたらす血糖値スパイクですが、食生活や生活習慣を見直すことで比較的簡単に予防・改善することができるとわかっています。以下のようなことを心がけましょう。
・朝食抜きはNG! 1日3食きちんと食べる
朝食抜きで活動すると、血糖値を下げないためのホルモンが働きます。
この状態で昼食を食べると、食後の血糖値が急激に上昇してしまいます。
昼食から夕食までの時間が長い場合の夕食後も同様です。
1日3食をできるだけ規則正しく摂ることが血糖値スパイクの予防および改善に効果的なのです。
・食事は最初に野菜から食べる
野菜や海藻など、食物繊維を多く含む食材を最初に食べると、糖の吸収が遅くなり、血糖値の上昇がゆるやかになることがわかっています。
食事は、最初に野菜、次に肉や魚などのたんぱく質、最後にごはんやパンなどの糖質という順番で食べることを意識しましょう。
また、糖の摂りすぎにも注意しましょう。
・食後に軽い運動をする
食後15分ほどの間は、胃腸の働きが活発になり食事から摂った糖分が血液中にどんどん吸収されます。
このタイミングで軽く身体を動かすことで、糖分の吸収を遅らせ、血糖値の急上昇を防ぐことにつながります。
激しい運動をする必要はなく、軽く歩いたり手足を動かすだけで十分効果があります。
さまざまなリスクをともなう血糖値スパイク。健康診断で特に異常がないと診断された方も、ぜひ上記のような予防、改善対策を意識した生活を心がけることをおすすめします。